富山県カンボジア王国親善協会は、富山県民とカンボジアの人々との相互理解を深め、国際親善に寄与する協会です。
アンコールワット
カンボジアの内戦、和平、復興の、劇的プロセスが、今でははるか昔のことのように感じられるほど、現代世界はめまぐるしい。アンコールでも、いつの間にか危うい繁栄とツーリズムが進行しつつある。私たちはこの熱狂の中で大切なものを見失ってはならない。アンコール遺跡は、どれもが重々しく、存在感が強いので、見る人の内面に訴えかける力がある。
バイヨン寺院のレーザースキャン
による3次元画像
しかし一方で、遺跡周辺の森や、大地や、空に、気持ちが広がっていく開放感がある。この両義性は、彫刻と建物の関係や、造営技術の上にも表れている。これらの性格は、クメールの先祖たちが、彼らの土地の気候風土と長い時間をかけて慣れ親しんできたものと、インドシナという当時の世界の中心から伝えられた新しい文明を調和させ、並存させるための工夫から生まれてきたものである。
地域と個の内面に深く根ざすこと、そして世界に広く目を注ぐことの大切さを、アンコールは静かに、且つ確固とした力をもって語りかけてくる。。
カンボジアにも、日本の私たちにも、そして世界にも、今はいまだそれが欠落しているため、アンコール遺跡を皆で協力しあって保存する意味がある。
日本政府アンコール遺跡救済チーム(JSA)団長
早稲田大学理工学術院創造理工学部教授・工博
中川 武